【報告書】2016年度JWEF女性技術者に贈る奨励賞授賞式と記念シンポジウム(2016年10月16日)

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『熱い探求心と自らの意志で道を切り開く女性技術者たち』

 

開催日:2016年10月16日(土)13:30-16:40

場所:東京大学本郷キャンパス工学部11号館講堂

JWEF奨励賞受賞者および受賞記念講演者:増田 恭子さん

株式会社NTTドコモ 移動機開発部システム企画担当主査
受賞記念講演タイトル:「技術系ワーキングマザーを集めた意見交換会」

 

JWEF奨励賞審査員特別賞受賞者および受賞記念講演者:村上和歌子さん

株式会社リコー リコー未来技術研究所 分析技術研究室 分析1グループ グループリーダー
受賞記念講演タイトル:「仕事を通じて私がえたこと〜思考錯誤の先に見えたもの〜」

 

記念シンポジウム基調講演者:浮川 初子氏

株式会社MetaMoJi 代表取締役 専務
基調講演タイトル:「コンピュータの成長と共に歩む」

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初秋の涼やかな心地よい秋晴れの2016年10月16日、2016年度JWEF奨励賞授賞式、記念シンポジウムおよび懇親会を開催しました。例年を上回る大変多くの皆様にご参加いただきました。本年度のJWEF奨励賞受賞者は株式会社NTTドコモ移動機開発部にてプロジェクトマネージャーとしてご活躍のされている増田恭子さんです。また、審査員特別賞の受賞者は、株式会社リコーのリコー未来技術研究所にて材料分析技術に従事されていらっしゃる村上和歌子さんです。

奨励賞授賞式では、弥富JWEF運営委員長より受賞者の発表と共に受賞理由の報告がありました。奨励賞を受賞した増田さんは、・プロジェクトマネージャーとして100名を超えるメンバーを取りまとめ、特許8件、社長表彰を受賞という大きな成果を出されている点、「技術系ワーキングマザーを集めた意見交換会」を立ち上げる等ネットワーキングを広げ周囲にも良い影響を与えていらっしゃることなど、時間制約がある中で、高い生産性で確実に成果を出すとともにインプット意欲も非常に高い点が高く評価されロールモデルにふさわしいという理由で受賞に至りました。また、特別賞受賞の村上さんの受賞理由としては、製品開発部門で実績を上げたのち、研究部門に異動され後も開発の経験を活かし分析業務を「攻めの仕事」とし存在価値を高めている点、研究所初の女性リーダーとして後進の育成にも積極的に関わり、若手女性研究者の目標となっていることが高く評価され受賞に至りました。

 また、本賞の創設者であり基金の拠出を頂いたJWEFアドバイザリーボードである都河明子先生からのメッセージも、本賞の創設経緯から社会で活躍する女性への期待と応援の温かいお祝いの言葉を頂きました。

 弥富運営委員長より増田さんへ賞状、楯と副賞が贈呈され、続いて村上さんへ賞状と副賞が贈呈されました。続いて、昨年の受賞者の日本放送協会の諸岡志保さんからお祝いとして、花束とメッセージが贈られました(代理贈呈)。最後に、本定例会の講演でもあり、外部アドバイザーボードの経済産業省大臣官房審議官の中石様より頂きましたお祝いのメッセージが司会より読み上げられました。

 株式会社NTTドコモ増田恭子さんの受賞記念講演のタイトルは「周囲を巻き込む仕事術」です。現在入社して開発から営業、企画と、育児復帰時の時短勤務も経て現在は開発プロジェクトのリーダーとして活躍をされています。どのような幼少期の環境で育ったかのお話から、現在に至るまでの増田さんご自身の意識の変遷を具体的な状況も合わせお話を進めていただきました。先ず、営業部門の時期に、クライアント様から技術に関する質問に対し上手く返答ができず戸惑っていた時にクライアント先様から「全て理解して答えるのではなく、プロフェッショナルと繋げてくれるのが、あなたの仕事です」と言われたのを機会に「周囲を巻き込む」という意識を持ったそうです。この意識を持ち実践する中で、良いチームを形成し、個人では達成しえない高いレベルの成果を得ることができるようになったそうです。増田さんの「周囲を巻き込む」マインドとして、①自分のマインドに表裏がないこと②自分を飾らず素直でいること③相手の言動に、肯定的に意図があると信じること、の3つが掲げられました。その理想に近づくために「日頃からのコミュニケーション」「内省(自分の考えや行動などを深くかえりみること)」以上の事を心がけているということです。また、後につづく後輩女性技術者に対して「自分が真にやりたいこと(=人生の目的)を知る」「10年後のありたい姿を具体的に想像する」というメッセージで講演を締めくくられました。

終始、堂々とした姿勢でのご講演は、増田さんご自身が一つ一つの実践から確認しながら身につけてこられた「周囲を巻き込む仕事術」であり、とても自信をもった説得力のあるご講演でした。

 

続いての講演は、株式会社リコーの村上和歌子さんです。受賞記念タイトルは「仕事を通じて私がえたこと〜思考錯誤の先に見えたもの〜」です。村上さんは、入社から商品開発部門、要素開発そして現在の研究開発部門へという変遷をされてきた中で、技術者として開発に真摯に取組み、その中でご自身のマインドの変遷があったそうです。迷いや模索の時期には①将来への不安(ライフイベントとの両立)②自分の仕事が見えない③じっくり考えられない、検討できない心残りが多い。という思いがあったそうですが仕事を通じながら、モノづくり全体の中の自分の仕事の位置を知り、手応えと自信を重ねる中で不安を解消されてきました。また村上さんの大らかなお人柄から出るコメント「メーカーの材料分析は木を下の土の中にいるバクテリアのようなもの」とか「家の中が多少ジャリジャリしていても気にしない」など、会場に和やかな笑いを誘う、とても親しみ感のある楽しいご講演でした。研究部門に一貫して取組む女性技術者としての真っすぐな姿勢と、細かい事に動じない大らかなお人柄は、後に続く女性技術者に安心感と希望を抱かせていただけるご講演だったように思いました。

 

 

最後のご講演は基調講演として株式会社MetaMoji代表取締役専務の浮川初子氏にご講演いただきました。タイトルは「コンピュターと共に至る」です。浮川氏は株式会社ジャストシステムを創業され、最高技術責任者として一太郎、ATOKなどの日本語変換アプリケーションを開発され、まさに日本のコンピューターの黎明期を歩んでこられた方です。大学では新設の電子工学科第1期生として入学され、大学としてもコンピューターに対し試行錯誤の時代に、大いに色々なことを自由に試すことが出来たことが良かったと振り返られました。コンピューターの日本仕様アプリケーション開発の草分けてとしてコンピューター技術に長年従事されてこられましたその原点は、そこにあったのかと納得させていただきました。浮川氏でなければお話できないパーソナルコンピューター史とご自身の技術者として変遷を重ねたお話は、私達女性技術者にとって大変ワクワクする貴重なお話でした。また、現在の人工知能やIoTの今後の可能性にも触れられ、更なる挑戦を進めていかれるその姿勢は、技術に携わる私達の大先輩として大変学びの深いご講演でした。

 

 

基調講演の後は、受賞者、関係者など多くの皆さんが集い懇親会を開催しました。懇親会場では、初対面の人同士も名刺交換や情報交換が盛んにされ、とても和やかな懇親会となりました。

 

(報告者 JWEF運営委員 森田 小百合)

イベントの元記事

http://www.jwef.jp/activity/setevt_20160923152344367047159443.html

参加人数報告

個人会員:
13名
法人会員:
9名
学生会員:
2名
会員外:
35名